ミッタル氏会見記
Ambitious man of steel
By P.Marsh, FT, Feb.3,2006
(要旨)
・ミッタル氏(55)はアルセロール社に186億ユーロに及ぶ敵対的買収を仕掛けた。
・15ヶ月前には、アメリカのISGを買収し、世界最大の鉄鋼メーカーとなった。現在従業員は22万人に達する。
・今回の買収の可否に関しては、専門家の意見は割れている。
・鉄鋼業は、ごく最近まで、成熟・沈滞産業の典型と見られてきた。
・彼を有名にしたのは、1995年のカザフスタンの製鉄プラント買収で、どうしようもなかったそれを世界でもっとも効率のよいプラントへと転換させた。
・彼はインド北西部ラジャスタンの出身で、そこは有能な商人を生む場所として知られている。
・1月13日にアルセロールの責任者ドール氏を食事に招き、合併を持ちかけたが、断られたため、今回の買収につながった。
・果たしてこの買収はミッタルにとってプラスになるだろうか。1990年代に、鉄鋼価格の低迷を受けてミッタル社はきつい状況に置かれたが、最近になって中国の需要爆発によって、一気に状況は好転した。今後はどうなるだろうか。
(解題)
・ミッタル氏のことを取り上げたのは、ディジタル・エコノミー2004(東洋経済刊、2004年)の解説編である(p191-)。そこではライアン航空とともに、ミッタルスチールを取り上げた。
・彼を取り上げたのは、まさにミッタル氏のビジネスモデルがIT時代のそれだからだった。
・通常鉄鋼業は成熟した斜陽産業ととらえられるが、やり方しだいでは、新たな可能性が生まれる。ミッタル氏が目をつけたのは、特に旧共産圏だが、ここはIT革命による通信自由化のおかげもあって、ソ連崩壊が進み(この辺の事情は前に紹介したフリードマンの、「世界は平ら」に詳しい)、これを契機として、国策会社で破綻のふちにあった製鉄所の近代化を図ることで、世界制覇を図ったのである。
・インドネシアで創業してからわずかに30余年で、成熟産業といわれる鉄鋼業で、ミッタル氏は世界一となったわけだ。
・ひるがえって日本を見ると、やはり中国特需に支えられて、鉄鋼会社は息を吹き返したが、ミッタル氏のような世界に通じるビジネスモデルを持ち、それで世界を押さえていくというビジョンに欠けているような感じがする。
・IT時代は、情報通信業だけでなく、既存の業界にも大きな影響を与える。明確な理念と歴史的感覚を持たないと、あっという間に転落する危険が待ち受けているだろう。
|