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小泉改革の行方
Now Japan can test Koizumi’s appetite for surgery
By. Anil Kashyap FT,05.09.12

(要旨)
・10年前アルゼンチンのメネム大統領は、2期目の大統領選に驚異的な勝利を遂げた。
・この選挙に出るため、同大統領は2期目の出馬を許すよう憲法を修正し、また高い失業と金融危機にもかかわらず、これは生じた。
・投票者は、同大統領の財政改革に対する厳しい政策と市場化戦略が、対立候補の経済国有化と貨幣増刷による財政破綻の救助より、マシだと考えたからだ。
・1ヶ月前、小泉首相が、解散を宣言したとき、多くの人は、勝つチャンスは小さいと見た。しかし実際には小泉首相は大勝した。
・小泉首相は、選挙を郵政改革に対する国民投票に転じてしまった。たしかに日本の郵便局は郵便を扱うだけでなく、保険や預金も扱っている。19世紀や20世紀初頭、人々が地方に住んでいたころは、こうしたシステムはどこの国でも見られた。しかし人々が都市に住むにつれ、ほとんどの国では、郵便以外の機能は切り離されてきたが、日本ではそうではなかった。90年代の金融危機の時には、預金者は安全を求めて、郵貯に金を流し込んだ。
・小泉首相はこうした機能を分割する法案を提出した。この法案によれば、郵貯と保険部門(依然として極めて巨大である)は独立することになった。こうして日本の金融システムの競争状態が再編成されることになった。
・郵貯が貸し出し機能を持つ、きちんとした経済的理由はない。この預金は公共投資に回り、官僚と政治家が口を出すのに便利だった。だから多くの自民党政治家が、こうした改革に反対したわけだ。
・小泉首相の勝利は、民営化の推進につながるだろう。こうした動きは望ましいが、仮にこれが完成しても、日本が再び競争力を取り戻すには、道ははるかに遠い。
・小泉首相は、郵政改革に問題を絞ったため、民主党との、他の問題に対する論戦を避けることができた。
・民主党が主張するように、日本は公共投資の大幅削減と増税が必要である。また農業に対する補助金の廃止や、労働市場改革、土地利用の制約の撤廃などが必要である。また高齢化社会の年金問題も避けて通れない。小泉首相は郵政改革に集中し、こうした問題には、あまり関心を持たないようだ。
・今回の選挙ではっきりしたのは、投票者が、現状にアキアキしていることだ。小泉首相の選挙演説を見る限り、彼が変化を真に求め、本格的な構造改革に取り組む覚悟であるとは、とても思えない。
・アルゼンチンのメネム大統領は、再選後、旧来の政策に戻り、結局アルゼンチンの負債はさらに積みあがるだけだった。日本の場合には、どうなるだろうか。

(解題)

・今回の選挙では、小泉首相が歴史的な勝利を収めた。確かに首相の選挙戦略は、民主党をはじめとする他党に優り、ここでの指摘のように、「現状にアキアキした」選挙民の票をかき集めるのに成功した。
・しかし問題は、これからである。郵政改革にしても、その内容は、完全な民営化とは程遠い。また外交(たとえばイラク、北朝鮮)にしても、経済にしても(たとえば年金問題、財政改革問題、自由貿易ゾーン)、これから日本が取り組まねばならない課題は数多い。郵政改革を突破口にして、こうした改革に進むのか、それとも単なる選挙公約としての“民営化”なのかが今後は問われるだろう。
・おそらく問題なのは、政治家に見識がないことだろう。今後の世界はどうなるのか。その中で日本はどう進むべきか。そのためには今から何をしていかなければ、ならないか。こうした観点から、政治論戦が進んでくれれば、幸いなのだが。