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グリーンスパン議長:
米国イタリア協会での講演より
Greenspan's Remarks
WSJ,October 12,2005
(要旨)
・FRBで18年働いたが、もっとも感銘を受けたのは、アメリカ経済が外的ショック(株式市場の崩壊、信用破綻、テロリズム、台風)を吸収し、それから復活する能力の高さだ。
・この抵抗力の強さは、経済の柔軟性が増したことと、IT技術革新のおかげである。
・過去を振り返ると、アメリカは建国から約150年間、市場重視で、有効需要のコントロールはほんのわずか行っただけだった。ちなみに独立宣言の調印とアダムスミスの国富論の出版とは同じ年である。
・そしてこの自由経済中心主義は、マルクスやオーエンなどのユートピアに打ち勝ってきた。
・1930年代になると、市場均衡は失業のあるところでも成り立つことが、ケインズによって示され、政府の介入が正当化された。同時に労働市場、証券市場、銀行、農業市場などへの規制が強化された。
・しかし1970年代になると、マクロではインフレ政策がうまくいかないことがわかり、ミクロでは規制強化による非効率性が目立ってきた。
・1980年代には、規制が緩和され、同時に社会主義経済の崩壊が観測された。
・規制緩和とIT技術革新によって、経済の柔軟性は増した。こうして、これまでだったら深刻な不況を招きかねなかったバブルの崩壊や9.11のテロのショックをアメリカ経済はうまく切り抜けてきた。
・われわれは、世界レベルでこうした市場中心の流れを理解し始めている。
・柔軟性は、競争を局題するところから生まれる。とくに重要なのは柔軟な労働市場だ。これは雇用不安につながると見る人もいるが、じつは雇用創造にもっとも重要なことだ。その実現には、教育をいくつになっても受けられることが肝要である。
・景気循環がなくなるわけではないが、経済の柔軟性が増すことによってショックの吸収が可能になり始めているのだ。
(解題)
・グリーンスパン氏は、そろそろ退陣に近づき始めているが、そのためか、逆にその発言は、“後世に残す”といった感じが強くなり始めている。
・ここでも、経済の柔軟性が数多くのショックをうまく吸収して、深刻な不況を招かなかったことを指摘している。ともすれば、自画自賛ととられかねないが、グリーンスパン氏が言いたいのは、自慢ではなく、こうした柔軟性を引き続きアメリカ経済が維持し続けるには、どうしたらよいかを真剣に考えてくれという、伝言ではないだろうか。
・ただし、気になるのは、グローバリゼーションの問題である。世界に統一政府は無く、成長する国、停滞する国、そして発展を追いかける国などさまざまである。しかも世界全体に目を向けることなく、個々の国の当面の目的のみが、各国政策当局者の主要な関心事となっている。こうしたときに、“世界は柔軟性に向かっている”という、楽観的な見方で済むのか、それともかなりの経済ショックが世界的に生じた後で、はじめて各国は、世界経済の安定を真剣に考えるようになるのか、は今後の課題だろう。これは単に世界で市場自由化を極限まで進めれば、解決する問題ではないだろう。
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