湘南エコノメトリクス提供
エコノメイトによる
景気予測、経済予測、産業構造分析サイト
お問合せ先

グローバル化の社会的費用
   J.Stiflitz, "The social cost of globalisation",FT, Feb. 24,2004

要旨)
・ILOは”グローバル化の社会的次元委員会報告”を発表した。筆者は、委員の一人だが、これを見ると、グローバル化に関する論議が最近急激に変化したことが分かる。
・そこでの中心テーマは、グローバル化の社会的帰結をきちんと見ていく必要があるということだ。
・これまで国家は、個人や社会が急激な経済変化から生じる各種のインパクトの緩和装置として働いてきた。
・しかしグローバル化は、国家のこうした緩衝機能を低下させている。
・つまり「世界政治システム」とでも呼ぶべきものが必要とされている。こうした意味で、世銀やIMFの運営はより透明化され、また投票システムは現在の経済的配分(1945年のそれではない)を反映せねばならない。
・また最貧国の社会的進歩を経済発展と切り離してはならない。つまり経済発展は必ずしも社会進歩をもたらさないし、これまで国際機関の行ってきた政策(とくに資本市場の自由化と貿易自由化)はこうした国に経済成長と安定をもたらさない、ということを認識すべきである。
・多くの貧しい国は、グローバル化の中で競争していくことはできず、これらの国が自立的発展できるようにすることは、国際コミュニティの責任である。このためGDPの0.7%(現在は0.23%)をODAに拠出すべきだろう。このようなことは、政治的決断さえあれば、明日にでも実行可能である。
・また自由貿易を標榜する豊かな国は、最貧国からの輸入に対して差別をすべきではない。
・グローバル化の副作用が顕在化したのは、制度的・政治的な失敗によるものである。つまり先に述べた国家の緩衝機能を低下させたことである。
・今後先進国では、アウトソース化された労働者が、政府に対してますます保護主義を要求するようになるだろう。しかし失業率が低く、社会保障制度も確立している先進国の労働者がこうした要求を出せるとしたら、そうした基盤のない途上国の労働者はもっと多くを要求してもよいはずだ。
・グローバル化は経済・金融面での不安定性をもたらした。これによってアジアや南米の中所得水準諸国は大きな痛手を受けた。こうした国では、中産階級が荒廃した。
・グローバル化のより適切な管理が必要とされる。そうでなければ、グローバル化に対する不満の声は高まるばかりだろう。

(解題)
かって世銀の幹部を務め、ノーベル賞受賞学者シュティグリッツの発言は迫力と説得力がある。世界第2位の経済大国である日本は、こうした問題にどのようなビジョンと政策を持っているだろうか。日本は、残念ながら、グローバル化には振り回されっぱなしだし、また途上国に対してどのようなスタンスを取るかすらはっきりしていない。このままでは、財政がパンクし、豊かさを失っていくうちに、先進国からも途上国からも相手にされない、置いてけぼりの国になってしまうのでは、ないだろうか。