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グリーンスパン氏、日本の為替政策を論じる。
2004年3月2日:ニューヨーク経済倶楽部での講演から

(要旨)
・ここではアメリカの為替政策を論じる気は無い。それは米国財務省の仕事である。
・外為市場は非常に効率的であるため、すべての情報は即座に為替レートに反映されるため、主要通貨の将来動向を予測することは不可能になっている。
・例外的に、いくつかの投機が成功しているが、それは政府が特定のレートを維持しようとして、失敗した場合に限られる。
・為替レートの予測モデルで、硬貨投げ以上の予測能力を発揮したものは無い。投資銀行などが外為市場で儲けるのは、予測がうまくいったからではなく、状況を作ったからである。
・現在アメリカの巨額の経常赤字を見て、ドルの実質価値はさらに下がるべきだという議論がある。しかし2001年に同様な議論が生じたとき、1年後にドルはユーロに対して6%上昇した。


・東アジアの金融当局、とくに日本と中国の外為市場に対する介入は大きい。
・2002年初頭以来、アジアの金融当局のドル買いは2400億ドルに達した。その中心は日本と中国で、円と元の切り上げ防止のためであった。
・このため中国の外貨準備は2003年11月で4200億ドル、日本のそれは同年12月に6500億ドルに達した。
・とくに日本当局の継続介入による、とてつもない外貨積み上げは、日本政府当局が、円レートがファンダメンタルから外れていると判断したためである。

・しかし円高要因の一つは、日本の投資家の円バイアスによるものである。この日本投資家の外為リスクを恐れ、国内投資にこだわる姿勢は、世界の投資家の性向から大きく外れている。
・政府の債務が増加しているときに、自国債の10年物を1%以下の金利で自発的に買いつづける投資家は、日本を除いては、世界に無い。だから日本国債は海外保有はほとんどない。
・日銀を除くと、こうした国債は、日本の家計、銀行、保険会社、郵貯などが保有している。こうした投資家は外国資産をほとんど保有していない。家計資産の99%は円建てであり、金融機関(郵貯を含む)のそれは91%である。
・金融機関以外の日本企業は、資産ポートフォリオにかんしてより多くの外貨資産を保有するが、その絶対額は小さい。
・もちろん日本企業の海外直接投資は大きく、また財務省は為替介入の結果、多額のドル資産を抱える。しかし民間部門は、一般的に海外資産を持とうとしない。
・こうした日本政府による介入は少なくし、ある時点でやめるべきである。
・こうした介入は貨幣供給増につながる。デフレ傾向が解消し始めている現在、こうした介入を続けるのは問題含みだろう。


(解題)
・興味ある方は原論文をぜひ読んでいただきたい。これはかなりはっきりした、アメリカから日本金融当局への警告だろう。
・一国の中央銀行当局の責任者が、他の国の為替政策に関して論じたものとしては、異例というほど、論調は強い。
・大事な点は以下の通り。
 1)為替市場は、介入が無ければきわめて効率的に動き、その動向を予測することはほとんどできない。
 2)為替投機が成功するのは、特定の国が、為替レートをある水準に固定しようとして、失敗したときである:これはもしかしたら、これから円に関する投機が始まりかけていることの示唆かもしれない。
 3)日本当局は、円高防止と称して多額のドル資産を購入している。
 4)しかし円高傾向の重要な要因は、日本の民間部門の投資に関する円バイアスにあるのではないか。世界の他に類の無いほど、日本の投資家の円資産への投資は大きい。
 5)するとまるで笑い話になるが、民間部門がせっせと日本国債を買い、政府がその金でドル資産を買うということになってしまう。政府の投資は、通常非効率だから、民間部門が自身で海外資産への投資に踏み切るべきだろう。
 6)グリーンスパン氏は、政府介入は続けるべきでないし、早晩やめるべきだと述べている。実際このところ介入は控えられているようだが、その結果はどうなるだろうか。国際金融筋が動き始めているのではないだろうか。
 7)たとえば最近の日本株への外人投資家の投資にしても、一つは日本経済の回復を見込んでいることは確かだが、もう一つには円高の進行を予測し、株が上がり、円高になったところで売りに転じるという戦略を考えているのかもしれない。